牛 体 温 の 常 時 監 視 シ ス テ ム の 開 発 ( 第 2 報 )
牛 体 温 の 常 時 監 視 シ ス テ ム の 開 発 ( 第 2 報 )
牛 体 温 の 常 時 監 視 シ ス テ ム の 開 発 ( 第 2 報 )
牛 体 温 の 常 時 監 視 シ ス テ ム の 開 発 ( 第 2 報 )
― 分 娩 予 知 プ ロ グ ラ ム の 開 発 ―
池 田 哲 *
・ 小 田 原 幸 生 **
・ 佐 藤 哲 哉 **
・ 武 石 秀 一 ***
・ 宇 都 宮 茂 夫 **** *
生 産 技 術 部 ・
**
情 報 産 業 部 ・
***
大 分 県 農 林 水 産 研 究 セ ン タ ー 畜 産 試 験 場 ・
****
( 株 ) リ モ ー ト
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-Tet s u I KEDA *
・ Yuk i o ODAWARA **
・ Tet s uy a SATO **
・ Sy ui c hi TAKEI SHI ***
・ Shi geo UTUNOMI YA **** *
Pr oduc t i on Engi neer i ng Di v i s i on・
**
I nf or mat i on Tec hnol ogy Di v i s i on・
***
Oi t a Pr ef ec t ur al L i v es t oc k Cent er ・
****
Remot e, I nc .
要 旨
本 研 究 は , 無 線 温 度 セ ン サ を 開 発 し , 長 期 間 に わ た る 牛 の 体 温 デ ー タ を 取 得 し , 解 析 デ ー タ か ら 分 娩 予 知 プ ロ グ ラ ム を 開 発 す る こ と を 目 標 と し た . 妊 娠 し て い る 乳 用 牛12 頭 に 対 し , 分 娩 予 定 日 よ り10 日 前 に 無 線 温 度
セ ン サ を 膣 内 に 挿 入 ・ 留 置 し , 5分 間 に 1 回 の 常 時 体 温 計 測 を 行 い , 分 娩 前 の 体 温 デ ー タ を 取 得 し た . 分 娩 前
18∼ 58 時 間 前 に ,体 温 が 低 下 し 始 め る こ と に 着 目 し ,24,48 時 間 前 デ ー タ と の 比 較 し ,0. 5℃ 低 下 し た 時 点 で ,
そ の 後 1. 5 日 以 内 に 分 娩 す る こ と を 予 知 で き る 分 娩 予 知 プ ロ グ ラ ム を 開 発 し た .
1. はじめに
家畜の健康や繁殖ステージを把握するうえで,家畜の
体温を常時,正確に,また,遠くにいても把握できる技
術は有効であることから,本研究は,家畜体温のモニタ
リング技術として,発信機能を有する体温センサを開発 し,家畜体温の生涯遠隔監視システムの確立を図ること
を目的とする.平成 16 年度は,有線温度センサによる体
温測定部位の選定実験を行うとともに,無線温度センサ
の試作開発を行い,牛への 48 時間の体温測定実験を行っ
た
(1)
.本年度は,開発した無線温度センサを牛の膣内に 留置して,長期間にわたる体温データを取得し,解析デ
ータから分娩予知プログラムを開発した.
2. 発信機能を有する温度センサの開発
無線温度センサの温度測定機能は,39± 5℃の温度範
囲内で温度精度± 0. 2℃,分解能 0. 1℃の f i ne モードと,
- 20∼60℃間で温度精度±1℃,分解能 0. 5℃の r ough モ
ードの2種類の温度計測が可能となる仕様で開発し,温
度精度を評価した結果,仕様を満足できていることを確
認した.
無線温度センサは,315MHz の微弱無線帯を利用し,計
測した温度データを 20 秒間隔で 3 回発信,50 秒待機の
110 秒間隔のサイクルで動作する.
無線温度センサの電波強度の実測による特性把握とア
ンテナの最適化を行い,無線温度センサを膣内に留置す
る場合は,Fi g.Fi g.Fi g.Fi g. 1111 に示すように,体外に線条アンテナを
出すことにより,体内での電波強度の減衰を補うことと
し,その電気的マッチングの調整と電波の指向性を最適
化することにより,微弱無線電波法規定を満たしながら,
深部体温の常時測定を実現した.
3. 無線温度センサによる体温測定部位の選定
牛の体温測定部位を選定するために,開発した無線温
Fi g. 2 外耳固定による体温測定
度センサを用いて,牛舎内の乳用牛成牛の膣と耳の体温
と,外気温を測定した.
膣内での体温測定は,無線温度センサを膣内へ挿入・
留置し,また耳での体温測定は,Fi g. 2Fi g. 2Fi g. 2Fi g. 2に示すように,
無線温度センサを外耳道内へ挿入し,耳票留め具を利用
して固定する方法で行った.膣,耳ともに連続 2 日∼1
ヶ月以上の期間の長期にわたって,常時体温データを取
得することに成功した.その結果,11 月までは膣と耳の 体温の相関係数は 0. 78∼0. 94 と相関が認められたが,12
月は- 0. 15となり,相関関係がなくなった.これは耳で
の体温測定が,冬の外気温の影響を受け,耳体温が膣体
温を大きく下回ったことによるものであり,冬場の耳で
の体温測定は困難であることが分かった.従って,牛の 体温測定は,無線温度センサを膣内に留置して,深部体
Fi g. 3 膣内留置用センサパッケージ
温を常時計測する方法で行うこととした.
4. 分娩予知プログラムの開発
まず,分娩予定日より約 10日前に膣内に挿入された
後
,
分娩まで確実に留置され,破水または分娩時に膣内より体外へ安全に排出されるように,無線温度センサパ
ッケージを設計し,センサ基板回路が分泌液で短絡しな
いように,Fi g. 3Fi g. 3Fi g. 3Fi g. 3に示すような形状で成形した.実際に
乳用牛成牛 12 頭に対し,膣内に留置し,全頭とも途中で
出ることなく,破水または分娩時に膣外に排出できたこ とを確認した.
牛舎内の乳用牛成牛 12 頭に対し,分娩予定 10 日前頃,
無線温度センサを膣内に挿入・留置し,5 分間に 1 回の
常時体温計測を行い,分娩前の体温データを取得した.
その結果を Fi g. 4Fi g. 4Fi g. 4 に示す.図中の横軸の時間は,分娩 Fi g. 4
Fi g. 4 分娩前の膣内温度(乳牛 12 頭)
36 37 38 39 40 41
0 12 24 36 48 60 72 84 96 108
分娩ま の時間 [時]
膣内
温度
[
℃
]
テ
タ
ク
タ
ク
時をゼロとした時の,分娩まで逆算した時間であり,実
際の時間経過は,横軸右から左へと流れている.この結
果から,データ取得した全頭で,破水または分娩開始よ り 18∼58時間前に,体温が低下し始めることが分かっ
た.この体温低下をより顕著にするために,Fi g. 5Fi g. 5Fi g. 5Fi g. 5 の 24
時間前データとの比較,さらにFi g. 6Fi g. 6Fi g. 6Fi g. 6 の 48 時間前デー
タとの比較を行い,48 時間前データより 0. 5℃低下した
時点で,その後 1. 5 日以内に分娩することを予知できる
ことに着目し,分娩予知プログラムを開発した.
またその後,破水または分娩時に無線温度センサが体 外に排出された時,測定温度は,36∼39℃の体温レベル
から外気温レベルの 35℃以下に低下したことを受けて,
この急激な温度変化による,破水または分娩開始を判断
するプログラムを開発した.
Fi g. 5 分娩前の膣内温度の 24 時間前との温度差(乳牛 12 頭)
Fi g. 6 分娩前の膣内温度の 48 時間前との温度差(乳牛 12 頭)
-2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
0 12 24 36 48 60 72 84 96 108
分娩ま の時間 [時]
24
時間前
の温度
差
[
℃
]
テ
タ
ク
タ
ク
平均
-2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
0 12 24 36 48 60 72 84 96 108
分娩ま の時間 [時]
48
時間
前
の
温度
差
[
℃
]
テ
タ
ク
タ
ク
このことから,分娩通報システムは,膣内の深部体温の変
化だけで,分娩の 18∼58 時間前の分娩予知通報と,破水また
は分娩時の分娩警報を,飼育者に都合2回,通報することが 可能となり,飼育者は余裕を持って,事前に分娩準備ができ,
分娩事故の防止に大きく寄与できることになる.
5. まとめ 本研究で得られた結果を以下に記す.
(1)家畜の深部体温を正確に計測できる,34∼44℃間では分解
能0.1℃,精度±0.2℃,-20∼60℃間では分解能0.5℃,精度 ± 1℃の温度センサを開発した.
(2)膣内に留置された状態から,確実に通信できる315MHz微
弱無線通信技術を確立した.
(3)分娩予定日より約10 日前に膣内に挿入され,分娩まで確
実に留置され,破水または分娩時に膣内より体外へ安全に排
出されるように温度センサパッケージを開発した.
(4)破水または分娩開始より18∼58時間前に,体温が24,48
時間前データと比較して 0.5℃以上低下することに着目した 深部体温による分娩予知プログラムを開発した.
(5)温度センサが破水または分娩時に体外に排出された時,発
生する急激な温度低下による分娩検知プログラムを開発し
た.
参考文献
(1)池田哲他, 牛体温の常時監視システムの開発, 平成16年度